株式会社 山田建築構造事務所
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「Gコラムストラクチャーデザイン」より抜粋

 

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(社)日本建築構造技術者協会 JSCA「構造家アラカルト」1996年10月号より抜粋
斜交継手を模型実験で検証する
―昭和62年度JSCA関西構造家賞をとられた沖縄サンマリーナホテルについてお聞かせ下さい。

山田 この建物は、リゾートホテルとして全客室から海が臨めるというコンセプトから、外観は下層階が末広がりとなるHP曲面を形成しており、内部は10層吹抜け大空間を構成しています。
構造種別はメガストラクチャー部をS主体被覆コンクリート造とし、周辺部をSRC造としました。
各フレームごとに柱の傾斜角が異なっているため、厚肉遠心力鋳造による鋼管柱とし、パネル部の板厚は50mmとしてダイアフラムを省略しました。
H形梁の仕口部が斜交継手となるので、理論値と実験値との整合性を確かめるために、故金谷弘先生(神戸大学)の研究室で、1/2.6縮小模型実験を行ないパネルの耐力と変形性状を確認しました。
架構全体が台形フレームとなっているので基礎梁にスラストが生じ、その引張力に対応できるようにプレストレスを導入しました 。
プレストレスの緊張時間は、工期の都合で基礎梁コンクリート打設後先行しました。
このことから、上部架構は支点の水平移動量を見込んだ応力の見直しをやっています。
デザイナーによって構造の力を高められた
―建築家とのかかわりについてお聞かせください。

山田 平田建築構造研究所に入社し、しばらくして担当者として建築事務所へ出向きました。
打合せをしていると、日夜所内で議論をしていることは何も聞かれず、建築を創る側での構造に対する問題点について数多く問われました。 即座に適格な答えが出せずTKOされてしまった思い出があります。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」・・・この場合は、危険なことではなく構造設計は本職として毎日業務していますので、余暇を利用して建築の学問を学ばなければならないと考えました。
それからはデザイナーとともに建築の本を読み感想を述べ合って、時にはコンペの模型作りにも駆り出されたりしました。
構造理論だけを深く追求するのは学術研究者であって、構造実務家の本来の仕事は構造の学問を追及することだけでなく、建築の構造学を模索していくことなのです。
そんな時、ある建築雑誌に建築家の前川国男先生が『構造について』また、構造家の横山不学先生が『建築について』それぞれ論じ合っている対談の記事にふれ、深く感銘を受けたことを覚えています。
以降、良き建築家の人達とのかかわりを沢山持ち、色々なことを学びました。そして彼らは私の構造の力を高めてくれました。
彼らがいなければ、私の構造感はもっと狭められたのではないかと思います。 デザイナーなしで構造設計はできると思いますが、そうだとすると私が今まで進んできた道はまた違った道に向かっていただろうと思います。

構造人生における最高の感動
―尊敬する建築家についてお聞かせ下さい。

山田 数多くいらっしゃいますが、中でも故西澤文隆先生には深い思い出があります。昔、先生が打合せの場で「大丈夫でしょうか?」と言われると、どんな難しいことでも「大丈夫です(内心は命との交換のつもり)」と言ったことがありました。
大阪府淡輪の海洋センターの現場や長野県蓼科の現場、また、そのほかの現場に同行したとき、熱心に話をされたり、仕事を進められている姿を見るにつけ、大変感銘を受けたことを覚えています。
独立して5年が過ぎたある日、先生から突然電話を受け「安土モニュメントの計画をしているのですが、相談にのってもらいたい」という話でした。
この電話は私の構造人生における最高のものとして言葉に表せない感動を受けました。
この作品は、先生の遺作となってしまいましたが、建築家とのかかわりの中の一つとして忘れることのできない尊い経験の一つです。

 

 

(社)日本建築構造技術者協会 JSCAへの寄稿文「私の考える建築構造教育」2004年4月号より抜粋
「これから」−これからの構造教育
―これからの教育にはこのようなことを取り入れてほしいと考えている。

幼少教育(国の教育)
一般の人達は、耐震性についての知識を持っていないため、「阪神・淡路大震災」での被害に遭遇して、国、地方自治体やマスコミ関係者での見解がまちまちとなって、社会に大きな混乱を与えた。
この地震で、建物が簡単に壊れ、人の命を奪い、さらに財産まで無くすという今まで想像もしなかったことが起こったのである。
これからはこの教訓を生かして、地震についての知識を学ぶ必要があるのではないかと思う。
幼少の頃から地震の恐ろしさを教え、徐々に耐震設計の基礎知識や備えについて教えていかなければならばい(例えば教科書などで)。
そうすれば、耐震性のある安全な建物に住みたいという意識が幼少教育の中で身に付き、建築構造についての関心も増し、構造実務者の役割を理解してくれるものと考える。
特定構造士(構造家スペシャリストの養成)
公的機関またはJSCAが主体となって建築学校を設置する。
そこでは、特定構造士を養成して社会に送りこむ。
特定構造士は構造士を指導する立場にあって、公的に認知された有資格者とし、社会的な評価のもとに権限が与えられ、業務を遂行する。
入学者は中高生程度を対象として、7〜10年間の教育を受ける。
教育指導者の構成は、学術関係者と建築デザイナー1/3、建築構造実務者1/3、一般社会人1/3程度とし、建築全般教育に加え、専門教育や建築構造に関わる社会全般のことを学習する。 卒業試験は建築構造についての適応能力やその資質と感性などを重要視する。
特定構造士は、建築構造の実務経験を10年以上経験してその資格を得ることとする。
おわりに
社会の中では、創造性豊かで個性的な建築構造物や、コストを抑えて、無駄のない一般的な建築構造物など、さまざまな建築物が要求されている。
しかし、それら一つひとつの建築物はそれぞれの必要性を持って建築されるのである。 与えられてきた条件のもとで、望まれるように、多種多様な対応ができ、また、正しく構造設計ができる構造実務者がプロとして社会の評価を得るのである。
このような若手実務者を一人でも多く世の中に送り出し、社会に貢献できることが真の建築構造教育であって、私達の今後の使命であると考えている。
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